東京高等裁判所 昭和43年(う)1229号 判決
被告人 中野浜雄
〔抄 録〕
本件の証拠関係からすると、被告人は買主の三浦一朗から受領した自動車代金相当の全額を売主の岡本精次郎に引渡したと認めざるをえないのであるから、その代金の引渡し前に、被告人がその代金の引渡しを拒否するかの如き言辞を弄した事実があつたとしても、それは冗談半分の失言か、酒席での放言であると考えられ、当時自己の保管中の代金について領得の意思があつたとまでは認められないので、結局右の点についての証明が十分でないこととなるのに、原判決が右失言ないし放言を保管中の自動車代金に対する不法領得の意思の発現であると認定して被告人を有罪としたのは、事実の誤認をしたものであつて、この誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるといわねばならない。論旨は、結局理由がある。
(山田 目黒 中久喜)